PowerShellではデバッグ用のメッセージを表示しながら開発が行えるように、Write-Debugという専用のコマンドレットを備えています。
コンソールにメッセージを表示するコマンドレットとしてはWrite-Hostコマンドレットがありますが、両者には次のような違いがあります。
Write-Hostコマンドレットは、実行すれば必ず表示を行う。Write-Debugコマンドレットは、$DebugPreferenceシェル変数によって表示制御が行われる$DebugPreferenceシェル変数はデバッグ時の振る舞いを変更する特殊な変数であり、下記の4つの値を指定することが可能です。
$DebugPreferenceに指定できる4つの値 値説明"Continue"Write-Debugに指定されたメッセージを出力"SilentlyContinue"Write-Debugに指定されたメッセージを出力しない"Stop"Write-Debugに指定されたメッセージを出力した後、動作を停止"Inquire"Write-Debugに指定されたメッセージを出力後、続行するかを確認下記スクリプトを準備して(ここでは「C:\Work\Debug.ps1」として保存)、$DebugPreferenceシェル変数のそれぞれの値の挙動を確認してみたいと思います。
C:\Work\Debug.ps1 $a = 2 $b = 3 $c = $a + $b Write-Debug "Line4: $c" $a = 4 $b = 5 $c = $a + $b Write-Debug "Line8: $c"Debug.ps1の各行の意味は下記の通りです。
1行目:$aに2を代入2行目:$bに3を代入3行目:$aと$bの和を$cに代入4行目:Write-Debugコマンドレットによる文字列の出力。ここでは「Line4:」と変数$cに代入された値が連結した文字列を出力。5行目:$aに4を代入6行目:$bに5を代入7行目:$aと$bの和を$cに代入8行目:Write-Debugコマンドレットによる文字列の出力。ここでは「Line8:」と変数$cに代入された値が連結した文字列を出力。$DebugPreferenceに値Continueを設定した場合の動作を見てみましょう。
まずは、下記のようにして $DebugPreferenceの設定を変更します。
PS C:\Work> $DebugPreference = "Continue"次に、作成したスクリプトを実行してみましょう。
C:\Work\Debug.ps1の実行 PS C:\Work> ./Debug.ps1 デバッグ: Line4: 5 デバッグ: Line8: 9Write-Debugコマンドレットに指定したメッセージを出力することがわかります。
$DebugPreferenceに値SilentlyContinueを設定した場合の動作を見てみましょう。
まずは、下記のようにして $DebugPreferenceシェル変数の設定を変更します。
PS C:\Work> $DebugPreference = "SilentlyContinue"スクリプトを実行します。
PS C:\Work> ./Debug.ps1 PS C:\Work>スクリプト中の4行目と8行目にあるWrite-Debugに指定したメッセージは出力されずに終了することがわかります。
$DebugPreferenceに値Stopを設定した場合の動作を見てみましょう。
まずは、下記のようにして $DebugPreferenceシェル変数の設定を変更します。
$DebugPreferenceシェル変数に"Stop"を設定 PS C:\Work> $DebugPreference = "Stop"スクリプトを実行します。
PS C:\Work> ./Debug.ps1 デバッグ: Line4: 5 Write-Debug : シェル変数 "DebugPreference" が Stop に設定されているため、コマンドの実行が停止されました 発生場所 C:\Work\Debug.ps1:4 文字:12 + Write-Debug <<<< "Line4: $c"1つめのWrite-Debugで指定されたメッセージを表示した後、エラーメッセージを表示して処理を中断することが分かります。
$DebugPreferenceに値Inquireを設定した場合の動作を見てみましょう。
まずは、下記のようにして $DebugPreferenceシェル変数の設定を変更します。
$DebugReferenceシェル変数に"Inqure"を設定 PS C:\Work> $DebugPreference = "Inquire"スクリプトを実行します。
PS C:\Work> ./Debug.ps1 デバッグ: Line4: 5 確認 この操作を続行しますか? [Y] はい(Y) [A] すべて続行(A) [H] コマンドの中止(H) [S] 中断(S) [?] ヘルプ (既定値は "Y"):1つめのWrite-Debugで指定されたメッセージを表示した後に、スクリプトを実行するかを確認してくることがわかります。
ここで[Y]または[A]を押すと、スクリプトが続行されます。
確認 この操作を続行しますか? [Y] はい(Y) [A] すべて続行(A) [H] コマンドの中止(H) [S] 中断(S) [?] ヘルプ (既定値は "Y"): デバッグ: Line8: 9 確認 この操作を続行しますか? [Y] はい(Y) [A] すべて続行(A) [H] コマンドの中止(H) [S] 中断(S) [?] ヘルプ (既定値は "Y"):このように、Write-Debugコマンドレットと$DebugPreference変数を使用することで、デバッグメッセージの出力の振る舞いを制御することが可能です。
PowerShellには、スクリプトのデバッグを行うために、Set-PSDebugというコマンドレットがあります。書式は大きく2つに分けることができます。
下記は、スクリプトのデバッグ機能の切り替え、トレース レベルの設定、および strict モードの切り替えを行います。
Set-PSDebug [-Trace 数値] [-Step] [-Strict]一方、こちらはすべてのスクリプトデバッグ機能を無効にします。
Set-PSDebug -Off-Traceパラメータに指定できる値には下記の3つがあります。
値説明0スクリプトのトレースを無効にする 1実行されるスクリプト行をトレースする2スクリプト行、変数の代入、関数呼び出し、およびスクリプトをトレースするでは、さきほどのスクリプトファイル(Debug.ps1)を使用して実験してみましょう。
まずはSet-PSDebugコマンドレットによるスクリプトファイルのデバッグ方法ですが
PS C:\Work> Set-PSDebug -trace 0; ./Debug.ps1のようにします。
-Traceパラメータに0を指定した場合の実行結果は下記の通りで、値0はトレースが無効となっているために1行だけ表示して終わっています。
デバッグ出力の行には、先頭に「デバッグ:」と表示されることに注意してください。
PS C:\Work> Set-PSDebug -trace 0; ./Debug.ps1 デバッグ: 1+ Set-PSDebug -trace 0; ./Debug.ps1-Traceに1を指定した場合は行トレースとなりますので、すべての行がデバッグ表示されます。
-Traceに2を指定した場合は変数の代入、関数呼び出しなど、各行で行われている詳細情報を見ることができます。
PS C:\Work> Set-PSDebug -trace 2; ./Debug.ps1 デバッグ: 1+ Set-PSDebug -trace 2; ./Debug.ps1 デバッグ: ! CALL script 'Debug.ps1' デバッグ: 1+ $a = 2 デバッグ: ! SET $a = '2'. デバッグ: 2+ $b = 3 デバッグ: ! SET $b = '3'. デバッグ: 3+ $c = $a + $b デバッグ: ! SET $c = '5'. デバッグ: 4+ Write-Debug "Line4: $c" デバッグ: 5+ $a = 4 デバッグ: ! SET $a = '4'. デバッグ: 6+ $b = 5 デバッグ: ! SET $b = '5'. デバッグ: 7+ $c = $a + $b デバッグ: ! SET $c = '9'. デバッグ: 8+ Write-Debug "Line8: $c"上記を見るとわかるように、一番最初にスクリプトファイルの実行を行っているので
! CALL script 'Debug.ps1'と表示されています。
また、変数に値がセットされるときは
SET $a = '2'.のように表示されていることが分かります。
上記をまとめると-Traceは、どの行を通って来たかを確認するだけであれば「1」を、詳細情報(変数にセットされた情報、関数呼び出しなど)を得たい場合には「2」を指定すれば良いことが分かります。
Set-PSDebugにパラメータ-Strictを指定することで、未定義の変数をエラーとして処理することができます。
下記のように、Set-PSDebugコマンドレットを-Strictパラメータを指定して実行し、値の代入されていない変数を参照しようとするとエラーになることが分かります。
PS > Set-PSDebug -Strict PS > $a 変数 $a は、設定されていないために取得できません。 発生場所 行:1 文字:2 + $a <<<<また、下記スクリプト(「C:\Work\Strict.ps1」として保存)を準備し
$a = 3 Write-Host ($a + $b)コマンドラインから実行すると
PS C:\Work> ./Strict.ps1 変数 $b は、設定されていないために取得できません。 発生場所 C:\Work\Strict.ps1:2 文字:20 + Write-Host ($a + $b) <<<<スクリプトファイル中の変数$bが値が設定されていないのに使用されたことをエラーとして報告します。
このように、-Strictパラメータを使用することで、未定義の変数を見つけることが可能です。
Set-PSDebugコマンドレットに-Stepパラメータを指定すると、ステップ実行を行うことが可能となります。「ステップ実行」は、スクリプトを1行ずつ停止させながら実行することができるモードです。
最初の方で紹介したDebug.ps1を用いて確認してみましょう。
コマンドラインで
PS C:\Work> Set-PSDebug -step; ./Debug.ps1と入力して実行してみると、1行実行されるごとにメッセージが表示されます。
PS C:\Work> Set-PSDebug -step; ./Debug.ps1 この操作を続行しますか? 1+ Set-PSDebug -step; ./Debug.ps1 [Y] はい(Y) [A] すべて続行(A) [N] いいえ(N) [L] すべて無視(L) [S] 中断(S) [?] ヘルプ (既定値は "Y"): デバッグ: 1+ Set-PSDebug -step; ./Debug.ps1「規定値は"Y"」と表示されている箇所がありますが、これは[Enter]キーを押すと次の行が押されることを意味しており、[Y]キーを押すのと同操作となります。
次に[Enter]を2回続けて入力し
この操作を続行しますか? 2+ $b = 3 [Y] はい(Y) [A] すべて続行(A) [N] いいえ(N) [L] すべて無視(L) [S] 中断(S) [?] ヘルプ (既定値は "Y"): sというメッセージが表示されたところで[S]を入力します。
この状態で[S]を入力した場合には、処理が一時中断され、プロンプトの表示が
PS C:\Work>>>に変わります。
ここで、プロントに下記のように$aと入力すると
PS C:\Work>>> $a 2ステップ実行を行っている地点での変数の値を確認することができます(この場合は変数$aに2が代入されていることが分かります)。
プロンプトを終了して、デバッグを再会する場合には exit と入力します。
PS C:\Work>>> exitブレークポイントとは、プログラムの動作状態を確認するために、強制的に停止したい位置を設定する場所のことです。
ブレークポイントの設定は簡単で$host.EnterNestedPrompt()をブレークポイントをかけたい場所に記述するだけです。
Debug.ps1を下記のように改善してスクリプトにブレークポイントを設定し、実験してみたいと思います(5行目に挿入しました。スクリプトは「C:\Work\Debug.ps1」として上書き保存します)。)
$a = 2 $b = 3 $c = $a + $b $host.EnterNestedPrompt() #ブレークポイントの設定 Write-Debug "Line4: $c" $a = 4 $b = 5 $c = $a + $b Write-Debug "Line8: $c"上記を実行してみます。
PS C:\Work> ./Debug.ps1 デバッグ: Line4: 5 PS C:\Work>>>上記のように、ブレークポイントを設定した位置までコードが実行されプロンプトが表示されます。
この状態は、「ステップ実行する」で説明した「中断処理」と同様で、変数の状態を確認することが可能です。試しに$a、$b、$cがどうなっているかみてみましょう。
PS C:\Work> ./Debug.ps1 デバッグ: Line4: 5 PS C:\Work>>> $a 2 PS C:\Work>>> $b 3 PS C:\Work>>> $c 5 PS C:\Work>>>このようにブレークポイントを設定すると、ブレークポイントが設定された場所まで一気にコードが実行され、その時点での変数の値を確認することができます。プロンプトを終了するには exitと入力して[Enter]キーを押します。
PS C:\Work>>> exit デバッグ: Line8: 9 PS C:\Work>今回は、PowerShellでのスクリプト開発におけるデバッグ機能について説明しました。
PowerShell自体にはVB.NETやC#のようにグラフィカルなデバッグ環境を持ち備えていません。しかし、今回紹介したデバッグ機能を用いることで、1行ずつステップ実行したり、変数の途中経過をウォッチすることが可能となります。
ぜひ、このデバッグ機能を有効に活用して、効率のよい開発を行っていただければ幸いです。
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